徳島県上勝町:量り売りスーパーの進化
人口1600人くらいで、高齢者比率が50%を超える山間の町。
里山の葉っぱや花を収穫し、料理の“つま”として出荷する「葉っぱビジネス」で
年収1000万を超えるおばあちゃんがたくさん出現、ということで
話題になり、国内外からひっきりなしに視察や見学を目的とした
訪問者が訪れているんだそうです。
もちろん「葉っぱビジネス」にも興味はあったのですが、
町を訪問したのは年末も年末の12月28日。
なかなか見学は難しいだろう、ということで、
もう1つ訪問したかった「上勝百貨店」に。
パスタもシャンプーも量り売りするスーパーなんだそうです。
自分はそこまで徹底したエコロジストにはなりきれないんですが、
いろいろな商品がなんか立派すぎる容器に入っているのは無駄な気がしていて。
また、容器のデザインも、どうしてもスーパーやコンビニの店頭で目立つ、
ということを考慮しなくてはならない、
法律で定められた表記をいれなくてはならない、
などなど制約が多いので、結局ごちゃごちゃと主張が強いものになりがちになり
使う人、使う場所のことを徹底したものになりにくいんだよな、
というもどかしさを感じていました。
できるものから量り売りで売る、というのができるんだったら
それにこしたことはないのだと思うのですよね。
そんなことを感じていたので、
以前読んだこちらのgreenzの記事が心に残っていました。
で、当日の朝。松山からのロングドライブだったので、
道中調べながらいけばいいや、と毎度の適当さで
googleで調べてみたら「閉店」の文字が!!!
もしかして、つぶれちゃったのかも、と思ってもうちょっと調べてみたら、
「上勝百貨店」は、量り売りコーナーも備えた
「マイクロブリュワリー」に発展していたらしいっす。
めちゃくちゃかっこいい建物。
町内の空き家など、使われなくなった資材を極力つかってつくられています。
この引き戸も空き家のものを活用したらしい。
引き戸をあけると、気持ちいい自然光が差し込む
量り売りスーパー&食事がとれるお店部分。
地元の番茶やさつま芋を使ったチップ、豆などが量り売りで売られています。
印象的だったのが、この採光部分。この窓もすべて町の中から集めてきたそうです。
洗剤も量り売り。でもこれ、地元の人買うのかなあ。
「量り売り」ではないんだけど、輸入物のハンドメイド石鹸なんかも置いています。
ポートランドにありそうな感じ。
お店部分を出て裏庭に行くと、そこはバーベキューもできる見晴らしのいい
スペースになっています。うーん、気持ちいい。
で、その隣がマイクロブリュワリーの部分。
300KLのタンクが3基。
もちろん出来立てのビールを店内で飲むこともできるし、
買って帰ることもできます。
クルマ運転だったので店内では飲めなかったけど、
ホワイトを買って帰りました。
地元でとれた柚子の皮をつかっているそうで、
爽やかな味と香りでした。
ちょうどランチタイムだったので、
チョップして甘く煮た地元の豚肉をつかったハンバーガーをいただきました。
これもオリジナリティがあっておいしい。
食後はハンドドリップのコーヒーも。
「持ち帰りにできますか?」と聞いたら、持ち帰り用のカップがない、とのこと。
コンセプト的にはあたりまえか。
ちゃんとコーヒーボトルを持参してきていてよかった。
お土産には地元のおいもでつくったチップスを買いました。
ほとんど味つけはしてないと思うんだけど、びっくりするくらい
甘くてさくさくでうまかった。
ビニールに入れて帰ろうとすると100円もするんですよね。
ですので当然持ち帰り用の袋をもってこよう、という気になる、と。
このマイクロブリュワリーは2015年の6月にオープン。
年間10000人ペースで人が来ているとのこと。
僕らが行った日もネットで知ったという外国人旅行者が来ていました。
他にも、徳島の市内から来た奥様集団とかもドライブがてら来ていて、
徳島の地元の人からも「おしゃれなドライブ先」として
結構定着しているのかも、という感じ。
お店でコーヒーを淹れてくれた方が、
先代の「上勝百貨店」の運営もしていて、このブリュワリーづくりにも
中心的な役割を果たした方だったので、色々話を聞いてみると、
・「上勝百貨店」では、しょうゆや塩など、もっと日常的なものも
量り売りで売っていた
・だけど、1600人という上勝町の人口では買い支えられなかった
・だから、マイクロブリュワリーをつくり、町の外からも人がこられるように
して、情報発信の拠点ともしていきたいと思ったんだよね
とのことでした。
たしかに、そうですよね。
量り売りの商品を町の人が日常的に買いにくるか、というと
ラインナップ的にも価格的にも(結構割高なので)難しい気がします。
いかにコンセプトがすばらしいか、ということもそうなんだけど
「その商品を軌道にのるまで買い支えられる人がいるか」
というのがめちゃくちゃ重要で、そこに無理があったのかな、という気がしました。
だけど、そこでマイクロブリュワリーのアイデアを着想して、
こんな素敵な場所をつくるまでやり続けたのは本当にすごいな、と。
おいしい食事とおいしいお酒、という原始的なものですが、
それだけに最強のキラーコンテンツで
きっちり上勝町に人を呼び込んでいます。
実はこのマイクロブリュワリーの運営会社は徳島市内にある
清掃や廃棄物処理とかを請け負う会社で、
こちらの店長もそこの社員なのだそうです。
上勝町は廃棄物をゼロにする「ゼロ・ウェイスト宣言」の町と
しても有名で、その仕事のからみで社員が上勝町に
通うようになり、そこから「上勝百貨店」のオープン、
そしてマイクロブリュワリーへの発展へのつながったのこと。
これだけのことを粘り強くやるのは個人ではなかなか難しいでしょうね。
基幹となるビジネスがあって町に通う理由があり、
町の人とも仲良くなれる基礎があった。
「提供者側が成功するまでやり続けられる」
というところも成功のポイントだと思いました。
このブリュワリーは東京の東麻布にもお店をオープンしています。
マイクロブリュワリーのビジネス自体も
今の生産規模だと採算ラインぎりぎりで、
やはり大消費地の東京でもっと売れていくと、
地元のこのブリュワリーの経営も楽になりそう、という感じみたいです。
なかなか難しいところも多い、ということも感じられましたが、
それだけに仲間と色々チャレンジして、強い知見がたまっているのだなあ、
とうらやましくなりました。
この後は徳島の山の中なのに移住者がどんどん増えている
神山町に行ってみました。こちらも今度まとめておきたいです。
ブリュワリーのサイトはこちら