3日目レポート:上市町新天地エクスペリエンスデザインワークショップ富山県上市町の移住・定住を考える
全3回のワークショップ、無事に終了しました。
ふう、まとまってよかったです。
翌日、町長と副町長ともお話しし、
ワークショップで検討した多くの施策を具体的に検討していくフェーズに
入れそうです。
ご協力いただきました多くのみなさま、本当にありがとうございました。
北日本新聞にも記事を書いていただいています。
また、塩谷さんにもレポートしてもらいましたので詳細はこちらで↓
3日目レポート
お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科理学専攻
修士1年 塩谷祥加です。
8月1日、富山県上市町にて「上市町を人が集まり続け、住み続ける町にする」をテーマとして
エクスペリエンスデザインを用いたワークショップの第3回目が行われました。
今回も新聞で取り上げていただきました。
最終回である今回は、前回ブラッシュアップしたアイディアを元に今後のアクションプランを考えます。
前回はカスタマージャーニーのステップを作成した後、各チームが3つの重要課題を見つけ出しました。
各チームの重要課題は下記の通りです。
チームA:《そろそろ持ち家・・富山県内ファミリー》
①家選び以前にそもそも上市町に来てもらったことがない
②宅地開発の事業者に上市町をPRできていない→在宅開発が少ない?
③上市町での生活が想像できない
チームB:《できればこれからも地元で・・地元就職希望学校生》
①進学者への上市情報の提示が少ない
②就職活動時に、町・地元企業から学生にアプローチしていない
③上市町自体が企業情報の集約をしていない
チームC《自分のお店を持ちたい!新天地「起業の虎」》:
②空き店舗や家付店舗情報が未整理
③成功するか不安な中「お試し」をする機会がない(上市に限らず)
チームD《子供は自然の中でのんびり育てたい子育て専門職ファミリー》:
①上市町を家族で体験したいときに手頃な泊まる場所が少ない
②町内アテンドからの情報発信
③上市町民自らが町外の人を呼び込む機会・仕組みが少ない
チームE《子育てファミリー引越し後》:
①上市町に引っ越したあとすぐにやるべきことの情報がなく、不安
②上市町の暮らしを”エンジョイ”するためのコミュニティに入りにくい
③住民自らが町の人を積極的に呼んで、次の住民をうみだす仕組みがない
【ワーク7】重要課題を解く施策を考える(60分程度)
前回の個人課題「上市のシンボリックストーリーを考えること」を共有した後、施策を絞り込んだ上で磨き上げます。
各チームでは「ターゲットが本当に喜んでくれるか」「他のターゲット・住民にもよい広がりがあるか」「上市らしい施策であるか」に気を付けながらワークを進めていきました。
いくつかのチームで上市町の知名度アップが重要課題として上がっており、上市町をPRするための施策を考えていました。
持ち家を考える富山県内の家族をターゲットにしたAチームにおいては、
「上市町は富山市内からもクルマで20分ほどと近いにもかかわらず、行ったことがある人が少なく、
イメージが希薄。これでは家を建てる候補地にならない」
ということから、「家づくりを検討してもらう前に、レジャーで良いので一度は上市に来てもらえるような機会を提供する」という声が上がっていました。そこからターゲットをもう一度見直し、家族ならば子連れで楽しめることが大事であるとして、子供も一緒に参加出来るようなイベントをまとめていました。
他のチームでも、Webに載せる情報や町外に配布するチラシの内容まで、施策案のより具体的な部分まで考えていきました。
今度はそれらのアイディアを実現するために、誰がどう対応するのかを考えていきます。
例えば地元就職希望者をターゲットにしたBチームでは、進学者への情報提示をするためには役場の町産業課が対応するだけではなく、地元の企業にも協力してもらい、タウン情報と企業情報をまとめた情報誌を作成するということでまとまっていました。
誰がどう行動するべきなのか、どんなことなら実現できそうか、今後の動きが見えてきていました。
個人課題のまとめ(左)/個人課題共有の様子(右)
【ワーク8】上市町のシンボルストーリーをまとめる(60分程度)
ここで改めて町のあるべき姿を考えるべく
「上市と言ったらこれ!」という町のシンボルストーリーをまとめます。
絞り込む際は
「たくさんの小話やイメージを連れてこられるか」
「町のことを知らない人にも言いやすいか」
「町の中の人も納得できるか」
という視点を重要視して絞り込みました。
ここでは下図の「顧客価値」「競争優位性」からストーリーを考えていきます。
各チームごとに考えた後、チームごとに5枚ずつの付箋を持ち寄り
一つの模造紙にまとめて全体で共有しました。
どのチームでも「水」は重要な要素として挙がっていました。
また「野生動物が身近な豊かな自然」という要素から
「カモシカに会えるまち」というストーリーが考え出されたり、
「治安がよい」という要素から
「鍵をかけたら怒られる」という面白いストーリーが話し合われました。
最後は全員にどの要素が一番しっくりくるかを尋ねたところ、
「水」と「自然」が半数ずつという結果に至りました。
ワーク途中経過の様子
各チームが持ち寄りまとめる様子
各チームのストーリー要素のまとめ
全員で議論する様子
【ワーク9】最後の施策ブラッシュアップ(30分程度)
全員で共有したことを元に、今まで考えてきたアイディアの見直しを行います。
また、最後の発表準備として、伝わりやすいようにまとめ作業を行います。
最後のブラッシュアップの様子
【ワーク10】発表(45分程度)
最後は各チームによる発表です。
各チームの3つの重要課題に対するアクションプランは下記の通りです。
チームA:《そろそろ持ち家・・富山県内ファミリー》
家選びをする前に、まずは上市町に来てもらえるようなイベントを開催する必要があります。
そこで子連れファミリーを対象として
自然を体験するプログラムツアーを実施すべきという提案がありました。
夏休みの自由研究にも繋がるように町の企業が子供向けに企業見学ツアーを実施すればいいのでは
とターゲットの気持ちをよく考えたアイディアも出ました。
また宅地開発の事業者に上市町をPRしていくためには
上市町自身が、業者が団地開発をするための後押しとなるような一手を調べる必要がありそうです。
さらに移住を考える家族が上市町での生活が容易に想像出来るように
町がWebや情報誌等を用いて病院や子育てに関する情報提示をしたり、
上市町のエリア広告を他の町や近隣の県にも出してもらう必要があるという意見も出ました。
チームB:《できればこれからも地元で・・地元就職希望学校生》
町産業課と企業が学生や親に企業情報を配布することで
進学者により多くの上市町の情報を伝えることが出来ます。
働く上で暮らしやすさは大切であるから、タウン情報もセットにすべきという意見もありました。
また就職活動時に、町・地元企業から学生にアプローチすべく、
地元企業が学園祭に参加することで学生との繋がりを作るという具体的な提案がありました。
一方で町は若者目線でのはたらくらすコネクションを作成する必要があります。
この意見に対し、
「今までは大人向けだったので、早速若者目線で考えてみよう」
と前向きな声が上がりました。
さらに上市町自体が企業の情報を集約するために
町と企業、高校や大学で枠組みを作り連携を取ることで情報を得て共有できそうです。
チームC《自分のお店を持ちたい!新天地「起業の虎」》:
起業の検討タイミングで、上市町を候補に入れてもらうためには外部にPRすることが重要です。
そこで町外の企業セミナーにチラシ配布や
金融機関の創業セミナーに上市町の情報を提供することで、PRに繋がるはずです。
未整理である空き店舗や家付店舗情報に関しては、
データベース化することで情報をまとめたり、
不動産屋との連携を図ることで情報整理が可能とのことでした。
成功するか不安な中「お試し」をする機会を作るためには
空き店舗を利用することでチャレンジショップを行うといいのではというアイディアが出ました。
チームD《子供は自然の中でのんびり育てたい子育て専門職ファミリー》:
上市町を家族で体験する際に手頃な宿泊施設を提供するべく、
観光を主に扱う企業を中心として連携や調整等をしてもらうことで、
町中の空き家や古民家を活用すべきという提案がありました。
さらに、町と人の魅力を知ってもらうための長期滞在型ツアーを実施することで、
町内アテンドからの情報を発信することができます。
若いうちに上市町を一回体験するとその人たちは再び町を訪れたくなるだろう
という意見に対しては、多くの方が「確かに」「なるほど」と納得していました。
また上市町民自らが町外の人を呼び込む機会・仕組みを作るためには、
人生初登山キャンプツアーや農業体験といったイベントが提案されました。
チームE《子育てファミリー引越し後》:
引越し後の町情報が少ないことへの不安を解消するには、
町が何でも相談窓口を作ることで解決できるのではという提案がありました。
しかし主だってやる人が曖昧であるために、実行に移すにはもうプランを練る必要がありそうです。
簡単に実行できそうな案としては
移住手続きシミュレーション等の情報発信といったWebや情報誌の充実がありました。
また上市町の暮らしを楽しむためのコミュニティに入りにくいという課題を解決するには
情報を出したい人と情報を必要とする人とのつながりを利用した
仲人制度を設けるべきという意見があがりました。
住民自らが次の上市町民をうみだすためには、
他のチームでも意見が出たようにマルシェのようなイベントを開催する必要がありそうです。
以上のようにまとまったアクションプランを元に、今後様々な施策が実行されていくことになります。前回に引き続き今回も限られた時間で、真剣な議論が行われていました。参加者が3日間考えに考え抜いた結果が、きっと今後の上市町の課題解決に繋がっていくことと思います。
感想(塩谷)
今回2度目の訪問となりました。上市町を訪れると自分の故郷のように心が落ち着きます。やはり定期的に訪問したいと強く思いました。今回このワークショップに携わったことで、上市町という存在を知り、素敵な方々と関わることが出来たのは、とても貴重な体験となりました。また次回訪れることがあったら、町の隅々まで観光してその魅力をもっと感じたいと思います。ぜひ上市の名前が全国に伝わって欲しいので、微力ながらも、私も周囲に上市町を宣伝していこうと思います。